童貞。
性行為を経験していない男性を指す言葉。
つまり僕。
性の低年齢化が指摘されている昨今、23歳で未だ童貞というのは由々しき事態であって、
…いや、まわりくどい言い方はやめよう。
要約して言うと、僕は童貞で、セックスがしたい。
それだけだった。
勿論彼女はいない。
風俗でも行けばいいんだけど、童貞卒業の相手が玄人さんというのはどうしても嫌だった。
例え卒業したところで、童貞から素人童貞に格上げ(?)されるだけだし。
と悩んでいた僕に、とある悪友がPCMAXというサイトを教えてくれた。
そいつが言うには、ヤりたい奴にはヤれる女を、彼女欲しい奴には彼女を、というふうに、何人もの橋渡しをしているんだそうだ。
「俺、愛のキューピッドだから」
とか言ってたけど、それが本当なら愛のキューピッドはお前じゃなくてPCMAXだ。
でもまあ、そいつ自身、今の彼女とはPCMAXで知り合ったらしい。
それなら僕でも、素人童貞を飛び級して童貞卒業できるかも…!と、期待を胸に登録してみた。
PCMAXには色んな機能があったけど、僕が攻略サイトを読んで思うに、『返信0検索機能』というのを使うのが手っ取り早いんじゃないかと思って、その機能を使ってみた。
『返信0検索機能』っていうのは、簡単に言うと、掲示板に投稿してある記事の中から、まだ誰からも返信がない投稿を検索できる機能のことだ。
それによって僕は、真須美さんという29歳の女性と知り合った。
彼氏と別れたばかりで、まだ男性と付き合う気はないけど気分転換がしたいってことで、気軽に遊べる相手を探してるらしい。
の割に顔写真も公開してなくて、プロフィールもスカスカ。
どうりで返信0なわけだ、と納得する内容だった。
僕の目的は最終的には童貞卒業だったけど、卒業したいオーラ満載で女性と交渉したって上手くいくわけないのは、さすがにわかる。
まずは女性に慣れておこうという大変失礼な動機で、僕は真須美さんと会うことにした。
待ち合わせのいわき駅で、僕はいきなりすごくビックリした。
真須美さんは篠原涼子ふうの、すごく綺麗なお姉さんだった。
白いワークシャツに、ぴっちりしたダメージジーンズを履いてる。
165センチくらいかな。今日はローファーだけど、ヒールを履いたら僕と同じくらいの目線になると思う。
すらっとしてて、うらやましくなるくらい脚が長い。
写真を載せてないくらいだから、写真を載せられないような感じの人なんだろうと勝手に解釈して、僕は連絡先を交換した後も写メ交換すらしてなかった。
完全に裏切られた。
「えーっ、真須美さんめちゃくちゃ美人じゃないですか!!」
思わず声に出して言うと、真須美さんは「はははっ」と快活に笑った。
いわき駅から徒歩3分くらいのところにあるブレイクというカフェで、僕らは軽く昼食をとった。
食べながら真須美さんに、
「なんでそんなに美人なのに写真載せないんですか?やっぱ知り合いにバレたくないとかですか?」
と僕は尋ねた。
「それもあるんだけどね。前にさー、違うサイトで顔出ししたら、色々うっとーしい男に絡まれちゃって。だからPCMAXでは顔出さないて決めてたんだ」
なるほど。
真須美さんなら、例え本人がお友達募集だと言っても、色んな目的の男がたくさんアプローチしてきたことだろう。
僕らはカフェで少し談笑してから、次なる目的地へ向かった。
アクアマリンふくしまは、田舎にある普通の水族館だ。
イルカショーとかもないし、これが目玉!っていうものが特にない。
でもまあ、僕は水族館は割りと好きな方だったので、真須美さんという美人を連れ歩いていることもあって、ウキウキと館内を見て回った。
水槽と水槽が天井でつながった三角形のトンネルを通っていた時、アジの大群が僕達の横をずわーーっと泳いでいった。
「うわぁー」
僕と真須美さんは揃って歓声をあげ、その後、
「綺麗ですね」
「美味しそうだね」
意見が分かれた。
水族館は割とすぐ見終わってしまったので、僕らは海沿いをドライブしながら三崎公園へと向かった。
真須美さんのお目当ては、その中央にあるいわきマリンタワーだ。
緑の公園と海が見渡せて、さすがに絶景だった。
「爽快だねぇ」
とか言いつつも、真須美さんはなぜかあまり窓辺に近づこうとしない。
「もうちょっと近づいて見た方がいいんじゃないですか?」
「いやあ、ゴメン。あたし高いこと苦手なんだ」
「じゃあなんで上ったんですか!?」
真須美さんいわく、高いところは苦手だけど、高いところから見る景色は好きなんだそうだ。
僕にはよくわからない。
三崎公園の中には植え込みで作られた迷路があって、真須美さんが入ろう入ろうと言うので、入り口までやってきた。
「迷路なんて子供の時以来ですよ」
「あたしもあたしも。じゃーどっちが先に脱出するか勝負ね!」
「えっ!一緒に回るんじゃないんですか!?」
僕の制止の声も虚しく、真須美さんは綺麗なフォームで地面を蹴って、あっという間に姿を消してしまった。
一方的に挑まれた勝負でも、負けるのはなんか悔しい。
僕は久しぶりに公園を走るなんてことをして、出口までの最短タイムを競った。
出てみると、真須美さんの姿はなかった。
(よし、勝った…!)
と喜んだのもつかの間、しばらく待っても真須美さんが出てこないので、もしかしてとっくにゴールして僕は置いていかれたのではと心配になった。
そろそろ電話してみようかとスマホを取り出したタイミングで、真須美さんがふらふらと出口から現れた。
「うわー、迷ったぁ…結構広いねこの迷路」
「お疲れ様です」
「悠太くんは早かったんだね」
「僕はずっと壁沿いに走りましたから…」
真須美さんが不思議そうにしていたので、迷路というのは左右どちらかの壁ぞいに歩けば必ずゴールできるようになってると説明した。
「えーっ!!なにそれズルイ!!」
別にズルくはないと思うんだけど、何故か真須美さんにばしっと腕を叩かれた。
僕はマゾではないけど、なんか嬉しかった。
それから、いわき市フラワーセンターで花見をしながら散歩した。
色とりどりの花が咲いてて綺麗だ。
「うーん、気持ちいいね~。こういうとこでお弁当食べたら美味しそう」
と、真須美さんはいかにも花より団子的意見を言った。
僕は、もしかしてこれは『今度お弁当作ってきてあげる』フラグかと期待して、積極的に同意する。
「お弁当いいですね」
「でしょ?悠太くん今度作ってきてよ」
僕が作るらしい。
フラワーセンターを出た後、四倉町にあるワンダーファームというところにご飯を食べに行った。
森のキッチンという、ビュッフェスタイルのレストランだ。
真須美さんは体型の割にピザやらトマトやらよく食べた。
最後はおなかをさすって、
「あー、おなかいっぱいー。子供生まれそう」
とか言ってた。
真須美さんは美人なのにそれを鼻にかけたところがないし、よく笑うし話しやすいし、すごく魅力的な人だと思う。
僕はつい、
「真須美さんは僕みたいなのが相手で気晴らしになりますか?」
とか、変なことを聞いてしまった。
「悠太くんさ、あたしに会うまで写メ送れとか、見た目どんな感じですかとか、芸能人だと誰似とか、そういうこと一切聞いてこなかったじゃない?外見で判断しないいい子なんだなーって思ってたんだ。だから今日会えて嬉しかった。悠太くんがイヤじゃなかったらまた遊んでくれると嬉しいな」
真須美さんはすごく優しい顔をして、そんなことを言った。
僕はそんな良い人間じゃない。
真須美さんを29歳のブスなオバサンと決め付けて、緊張せずに肩慣らしできるとか、そんな最低なことを考えてただけだ。
僕はなんだか申し訳ない気持ちになって、最後に訪れた夜の森公園を歩きながら、僕の正直なところを告白して謝った。
童貞卒業のためにPCMAXに登録したこと。
真須美さんの容姿に興味を持たなかった理由。
軽蔑される覚悟で話したら、真須美さんは何故か「あはっ」と吹き出した。
「そんなこと、言わなきゃわかんなかったのに。いくらでも良い人ぶれたのに、正直に言っちゃうなんて、やっぱり悠太くんいい子だよ」
23の成人男子に”いい子”はないでしょ、と思ったけど、僕は素直に嬉しかった。
それから、真須美さんはこんな爆弾発言をした。
「どうしてもいい子が見付からなかったら、いつかおねーさんが筆おろししてあげるから」
僕が真顔で固まっていると、冗談だよ冗談、と笑われた。
それから真須美さんと何度も遊びに行って、それは冗談ではなくなった。
アビラというラブホテルで、僕はとうとう童貞を卒業した。
真須美さんは、胸はちょっと小さめだけど、スレンダーですごく綺麗な体をしてた。
緊張のあまり勃起しない僕の息子を優しく口に含んで勃たせると、自分から腰をずらして入り口に導いてくれた。
「そのままゆっくり入ってきて…」
僕は言われるままに腰を進める。
真須美さんのアソコはぬるぬるで、僕のを包み込むみたいに飲み込んでいった。
「うわ、すごい気持ちいい…」
思わず口に出てしまった。
真須美さんは僕の下でニコっと笑うと、
「いいよ…動いてみて」
と言って、僕の腰を軽くつかんで揺さぶった。
ぎこちなくピストンを始めて、途中からあまりの気持ちよさに夢中で腰を振った。
真須美さんはいつもとは全然違うエッチな声で、
「アン、アンッ」
ってあえいでいた。
真須美さんの肉壁にきゅうきゅう締め付けられて、僕は5分と持たずに果ててしまった。
ピルを飲んでるから大丈夫と言われて、生で挿入してたんだけど、僕が膣内にびゅるびゅるって射精すると、真須美さんは、
「アッ、アーーーン!」
って大きく叫んで、ぎゅーって抱きついてきた。
精液を搾り取ろうとするみたいに、膣がきゅきゅっと収縮した。
こうして僕は童貞を卒業し、更に年上美人の彼女もできた。
今は、真須美さんを呼び捨てにしたいけど気恥ずかしいとか、そんな幸せな悩みを抱えて日々を過ごしてる。